2013年10月02日

第19回 株式会社のガバナンス(監査役の権限2)


前回の続きを記載します。

1.監査役の権限(その2)

(3) 取締役等への事業報告徴収権(会社法381条2項)

監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他使用人に対して事業の報告を求めることができます。

(4) 業務状況調査権・財産状況調査権(会社法381条2項)

 監査役はいつでも会社の業務及び財産の状況を調査することができます。

(5) 株主総会に対する報告義務(会社法384条)

   監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものについての調査義務があり、これらが法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認められるときは、監査役はその調査結果を株主総会に報告しなければなりません。

(6) 取締役の行為の差止請求権(会社法385条1項)

取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はそのような行為を行うおそれがあり、そのことにより会社に著しい損害を生じるおそれがあるときは、監査役は取締役に対してその行為をやめることを請求することができます。

(7) 取締役等の損害賠償責任免除に対する監査役の同意権(会社法425条3項、426条2項)

取締役等の会社に対する損害賠償責任の一部免除に関する株主総会議案の提出に同意する権利があります。また、取締役が取締役等の損害賠償責任の一部免除を決定できるとする定款の定めを設ける株主総会議案の提出に同意する権利があります。

(8) 会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表(会社法386条1項)

監査役設置会社において、会社が取締役に対して訴えを提起する場合、又は、取締役が会社に対し訴えを提起する場合において、監査役が会社を代表します。

2. 監査役の責任

会社と監査役との関係は委任の関係になります。(会社法330条)

監査役がその職務を行うにつき悪意又は重大な過失により第三者に損害を与えた場合は、その第三者に対して損害賠償の責任を負います。(会社法429条1項)

監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項について虚偽の記載・記録をした場合には、そのことにより損害を被った者に対し損害賠償の責任を負います。(会社法429条2項3号)

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2013年09月25日

第18回 株式会社のガバナンス(監査役の権限)


1. 監査役の権限

監査役の職務は、取締役の職務の執行を監査します。職務執行の監査とは、会計監査と業務監査を行うことです。(会社法381条)

非公開会社(監査役設置会社及び会計監査人設置会社を除く)にあって定款に監査役の監査の範囲を会計監査に限定する旨の定めがある場合は、会計監査に限定されます。(会社法389条1項)

(1) 会計監査
株主総会に提出する計算書類及びその附属明細書等を監査することです。(会社法436条1項)

(2) 業務監査
原則として取締役の業務執行及び会社の行為の適法について監査することです。

監査役は、法務省令の定めるところにより監査報告書を作成します。(会社法381条1項)取締役会非設置会社の場合、監査報告書は株主総会に提供されます。(会社法438条1項4号)

複数の監査役がいる場合、各自が独立している機関になるので報告書は別々に意見を報告することになりますが、各自の意見が同一の場合は連名により報告してもよいことになっています。

【参考】監査役会

大会社に該当し、非公開会社と委員会設置会社を除いた会社は監査役会が必置となります。(今回のテーマでは中小企業をイメージしていますので参考です。)監査役会は3人以上の監査役(そのうち、半数以上は社外監査役)からなり、監査報告の作成する職務等があります。

なお、公益法人では監査役会に相当する機関として監事会というものはありません。もちろん任意の機関として定款で定めることはできますが、法定の機関である監事の権限を奪うものであってはなりません。


2. 権限と義務

主な監査役の権限と義務は以下の通りになります。

(1) 取締役会の出席権と出席義務(会社法383条1項)

取締役会設置会社の場合、取締役ないし取締役会の行為を的確に把握するために、監査役は取締役会への出席権が認められていると同時に出席する義務があります。取締役会において法令・定款に反する決議、または著しく不当な決議がなされるのを防ぐため、取締役会における意見陳述権・意見陳述義務があります。(会社法383条1項)

法令若しくは定款に違反する議案または著しく不当な事項がある議案が株主総会に提出されることを阻止するため、そのような議案が株主総会に提出されたときは、監査役は株主総会で意見を報告する義務があります。(会社法384条)また、差止請求権を行使することができます。(会社法385条)

(2) 取締役(取締役会設置会社においては取締役会)への報告義務(会社法382条)

監査役は、取締役が不正な行為若しくは不正な行為をするおそれがあるとみとめるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社においては取締役会)に報告しなければなりません。(会社法382条)

取締役会で報告を行うために、監査役には取締役会の招集権者に対する招集請求権および取締役会招集権が認められています。(会社法383条2項、3項)



長くなりましたので、その他については次回以降に記載します。

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2013年09月18日

第17回 株式会社のガバナンス(監査役)


1. 監査役の設置

取締役の職務執行を監査する機関として、監査役の設置があります。非公開会社であり、かつ、取締役会非設置会社であるならば、監査役を設置するかは任意となり、定款で定めることとなります。

2. 監査役の選任

監査役は、取締役(及び会計参与設置会社においては会計参与)の職務執行を監査する機関であり(会社法381条1項)、株主総会の決議により選任されます。(会社法329条1項、341条)監査役を設置する場合は1名以上となります。

3. 監査役の任期

監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。(会社法336条1項)

非公開会社においては、定款の定めにより任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとすることができます。(会社法336条2項)

4. 監査役の解任

監査役を解任するためには、株主総会の特別決議でなければなりません。(会社法339条1項、309条2項7号)少数株主による解任の訴えも認められています。(会社法854条)


【参考】株主総会の特別決議

特別決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が株主総会に出席することにより株主総会が成立し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数をもって行います。定足数は、定款によって議決権を行使できる株主の議決権の3分の1未満に引き下げることはできません。

一般社団法人の特別決議の定足数は、総社員の半数以上となり、頭数になります。(議決権は定款によって議決権の加重があります)一方、一般財団法人の場合は定足数も議決権も評議員の頭数しかありません。(一般法49条2項、189条1、2項)


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2013年09月12日

第16回 株式会社のガバナンス(取締役と株主の関係)


1. 取締役と株主との関係

株主は、株主総会における取締役の選任・解任等をするという関係ですが、直接的な関係として次の2点があります。

(1) 代表訴訟(会社法847条)
(2) 取締役の違法行為等の差止め(会社法360条)

2. 代表訴訟の概要

会社が追求すべき取締役の責任を個々の株主が会社に代わって追求することができます。
取締役同志の仲間意識から、責任のある個々の取締役に対する損害賠償などを行わない等により、会社の利益(株主全体の利益)を守るために、株主が会社に代わって権利を行使する制度です。

3. 取締役の違法行為等の差止めの概要

監査役不設置または委員会不設置の株式会社において、取締役が株式会社の目的の範囲外の行為、その他法令もしくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をする恐れがある場合において、当該行為により会社に「著しい損害」が生じるおそれがあるときは、株主は取締役に対してその行為の差止を請求することができます。

監査役設置会社(又は委員会設置会社)においては、監査役(監査委員会)による差止め規定(会社法385条、(407条))があるため、株主の差止請求権の要件は、「回復することができない損害」とされています。(会社法360条3項)

刑法などの法令違反をしようとしている場合、取締役会の承認を得ずに会社と取締役が利益相反取引をしようとしている場合、及び会社の目的の範囲外の行為する場合(定款違反)は、その行為が有効となるか否かに関わらず、差止めの対象となります。


【参考】一般法人の場合「回復することができない損害」

「理事の違法行為等の差止め」について、一般法にも同様な規定があります。(一般法88条1項、2項、197条準用)

一般社団法人の場合、監事非設置の法人がありますので、会社法のそれ同様、監事非設置法人は「著しい損害」となりますが、監事設置法人では「回復することができない損害」となります。一方、一般財団法人においては、監事は必ず設置となりますので、評議員の「理事の違法行為等の差止め」については「回復することができない損害」となります。

なお、訴訟について一般社団法人においては、社員が責任追及の訴えをすることができます。(一般法278条1項、2項)
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2013年09月05日

第15回 株式会社のガバナンス(取締役の責任免除)


1. 取締役の責任の全部の免除

取締役は、その任務を怠ったときは、株式会社に対して、これにより生じた損害を賠償する責任を負うことが明記されています。(会社法423条1項)

この責任は総株主の同意によりその全額を免除することができます。(会社法424条)
また、一部の免除も可能と考えられています。いずれにしても、総株主の同意を得るために、株主総会を開催する必要はありません。(完全無議決権株式の株主も、同意を得るべき総株主に含まれるとされています。)

2. 取締役の責任の一部の免除

株主数が多い会社では、総株主の同意を得ることは困難になります。そのため、次の方法により、取締役が会社に対して負う責任の一部を免除することができます。

@ 株主総会の特別決議による一部免除(会社法425条)
A 定款の定めに基づく取締役会決議等による一部免除(会社法426条)
B 社外取締役等が対象となる、定款の定めに基づく責任限定契約による一部免除(会社法427条)

いずれにしても、取締役が職務を行うにつき善意かつ重大な過失がない場合となります。
また、会社との直接の取引(会社法356条1項2号、428条)の利益相反取引の相手方である取締役に生じた423条1項の責任について一部免除はできません。(会社法428条2項)

【参考】

取締役等の責任については細かく類型されています。公益法人等の役員責任についての条文(一般法)の方がシンプルです。会社法については、旧商法からの類型があり、また、剰余金の配当や利益供与等、範囲が広いことによります。ただし、一般法は会社法に構造が似ており、一般法人(一般社団法人・一般財団法人)は剰余金を分配しない(非営利)という違いだけで、会社法の解釈が参考になる場合もありえます。
posted by 田舎おやじ at 07:24| Comment(0) | 事業再生